【顧客接点DX:第三回】潜在顧客を増やすためのマーケティングDX施策

企業内の様々な部門でDX(デジタルトランスフォーメーション)が推進される中、顧客接点の中心となるマーケティング部門や営業部門、カスタマーサポート部門のDXについてもより重要性が問われています。

企業経営におけるゴールの一つは「売上を伸ばしかつ安定した収益基盤の仕組みを作る」ことであり、顧客接点となる各部門のDXは企業の売上改善に大きな影響を与えます。

そこで本連載では、マーケティング、営業、カスタマーサポート部門を中心に「顧客接点のDXはなぜ必要なのか?」「どのように進めていくべきか?」について、以下のステップで解説していきます。

【第一回】マーケティング4.0時代はCX戦略が重要
【第二回】売上改善のために注力すべき2つのポイント
【第三回】潜在顧客を増やすためのマーケティングDX施策
【第四回】引き上げ率を改善するための各部門のDX施策
【最終回】顧客接点DXを推進する組織体制の変革

第三回の記事では、「潜在顧客をいかに増やすか?」対して、マーケティング部門としては、どのようにDXを推進すべきかについて解説いたします。

 

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは変革すること

前回の記事では、売上を改善するためには、「潜在顧客をいかに増やすか?」「各部門の引き上げ率をいかに改善するか?」の2点が重要であることを解説しました。それでは、一つ目のポイントに対して、マーケティング部門としてはDXをどのように推進していくべきでしょうか?

その前にまずは、DXの定義について、おさらいします。

経済産業省が2018年に公表した「DX推進ガイドライン」では、DXを以下と定義しています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」

引用元:経済産業省「DX推進ガイドライン」より

昨今ではこのDXへの取り組みは「マーケティングDX」「営業DX」「経理DX」「物流DX」「人事DX」など各部門毎の取り組みとして細分化され定義されています。

DXとこれまでの「IT化」や「デジタル化」との大きな違いは何でしょうか?

IT化やデジタル化では、既存の業務課題に対してITやデジタル技術を活用した「業務効率の改善」がゴールでしたが、DXでは、「データ」や「デジタル技術」はあくまで手段として活用し、「ビジネスモデルそのものの変革や、業務・組織そのものの変革」(=トランスフォーメーション)をゴールとしている点です。

そのためDXを推進していくためには、これまでの自社の固定概念に囚われず、他社や業界の成功体験をもとにした「ベストプラクティス」な方式にビジネスモデルや業務内容、あるいは組織体制そのものを積極的に変えていく必要があります。

旧来のITやデジタル技術の活用は「自社特有」の業務課題に対して、どのように解決すべきか?に主眼がおかれていたため、解決策としてはいわゆるスクラッチ型のシステム開発や標準機能に追加したカスタマイズ開発が多く、既存の業務プロセス自体を変える必要性がない反面、結果としてプロジェクトの「遅延」や「高コスト化」、複雑に作りすぎた故の「システム障害の多発」を招くことが多かったではないでしょうか。

DX時代のITやデジタル技術の活用は、他社や業界の成功体験をもとにした「ベストプラクティスな標準機能」が既に完備され、「早期導入が可能」でかつ「低コスト」で「堅牢」なソリューションやクラウドサービスを採用し、あらかじめ最適化された標準的なツールの機能に、業務プロセスそのものを合わせていく(これまでのやり方を変えていく)ことが重要となってきています。

潜在顧客を増やすために必要なマーケティングDXへの取り組み

それでは、一つ目の重要ポイントである「潜在顧客の数を増やすこと」に対して、マーケティング部門としてはどのようにDXを推進していくべきでしょうか?

前回の記事では、以下の図を用いて「数字のセオリー」上、売上を伸ばしかつ安定した収益基盤の仕組みを作るためには、新規顧客を生み出すための元々の母数となる「潜在顧客の数を増やすこと」と、潜在顧客から優良顧客まで転化される際の「各業務の引き上げ率を改善すること」の二つが重要である点を解説しました。

Customer Jurney

 

DXで定義される「データ」と「デジタル技術」の活用は、マーケティング分野では、いわば「デジタルマーケティングの活用」とも言い換えることができます。

また、自社の製品やサービスを幅広く露出して認知させる潜在顧客を増やすということは、デジタルマーケティングを活用して、自社のウェブサイトへの「流入=ページビュー(PV)をいかに増やせるか?」ということに当てはまります。

それでは、「デジタルマーケティングを活用してページビュー(露出と認知)を増やすための施策」について、潜在顧客フェーズの業務プロセスの流れを例に、解説していきます。

 

Step1 : 顧客ターゲットを絞る

まずは、自社にとって最も付加価値の高い顧客ターゲットを検討する必要があります。ここで最近よく使われるのが「ペルソナ」の作成です。CX戦略の策定における「サービスデザイン」の中の一手法にも位置付けられます。

ペルソナとは簡単にいうと、自社の製品やサービスのターゲット顧客となる架空の人物イメージ像を「具体的な人物像」に落とし込んだものとなります。

旧来の「ターゲット」が年齢層や性別、住んでいる地域など、比較的あいまいで幅広い情報であることに対し、「ペルソナ」では、名前、年齢、職業、住所、趣味など、実際に存在するかのようなイメージで顧客像を作成します。

「ターゲット」と「ペルソナ」の違いは以下のようなイメージです。

ターゲットペルソナ

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年齢層:30〜40代

性別:男性

住んでいる地域:東京近郊

職業:企業のシステム担当者

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名前:鈴木太郎
年齢:35歳
職業:大手製造メーカーのCRM領域を担当するシステム担当
会社規模:従業員5000名規模
学歴:明治大学卒
住所:東京都世田谷区世田谷1-1-1
家族構成:妻、子供(男の子一人)
趣味:ゴルフ、テニス
性格:人当たりがよく頼まれると断れない性格。通勤途中に、仕事に役に立つ情報を日々チェックすることが日課。次回の昇進試験に向け、業務の成果をいち早くあげたいと日々奮闘中。

なぜ具体的な「ペルソナ」の作成が必要なのでしょうか?
ペルソナの作成は以下のようなメリットをもたらします。
  1. 人物像の具体性が高いため、検討するチーム担当者間の認識のギャップを解消できる
  2. 自身が具体的なペルソナに成り代わることで、顧客視点で本当に何が必要なのか?のイメージがつきやすい
  3. 人物像の具体性が高いため、自社のマーケティング戦略の方向性が固まりやすく、ぶれにくい

ペルソナの検討が終えたら、次はコンテンツ制作の検討に入ります。

 

Step2 : 訴求コンテンツを制作する

コンテンツ制作を検討する上で、最近では「カスタマージャーニーマップ」が活用されます。こちらもCX戦略策定における「サービスデザイン」の中の一手法にも位置付けられます。

「カスタマージャーニーマップ」とは、簡単に言うと作成したペルソナが自社と何らかの接点を持つ際の「一連の思考や行動の流れを可視化」したものです。

5A理論の各フェーズにおける「ペルソナの思考と感情」および「思考と感情に基づき予測されるペルソナ の行動」を作成し、この行動に対して「必要なデジタル施策(コンテンツ施策)」の洗い出しを検討していくような以下のイメージとなります。
※本ジャーニーマップはデジタル施策に絞った形式で作成しております。

Customer Journey Map

 

ペルソナとカスタマージャーニーマップを作成することで、自ずと自社にとって必要な「デジタル施策の全体像」が把握でき、調査・認知フェーズの潜在顧客を増やすためにまずは「どのような種類でどのような内容のコンテンツを準備すべきか?」が見えてくるのではないでしょうか。

上記のカスタマージャーニーマップの例では、コンテンツ制作の具体的な検討内容として、以下を深掘りしていくようなイメージです。

  • ペルソナは何を知りたがってて、興味や関心を惹くブログ記事はどのような内容がよいか?
  • ペルソナに自社の製品やサービスを1ページで完結に伝えるためのLPはどのような構成がよいか?
  • ペルソナに飽きさせない定期的なメルマガはどのような内容を盛り込むべきか?
  • ペルソナに製品やサービス、業界動向、事例をより深く理解してもらうためのお役立ち資料はどのような内容の資料がよいか?
  • ペルソナに参加してもらえる魅力的なオンラインセミナーはどのような内容を盛り込むべきか?

ここで重要なことは、コンテンツ内容がいくらよくても、ペルソナにとって最も心地のよいブランディングイメージになっていなかったり、お問い合わせなどの次のアクションを促す導線が整備されていないと、単に勉強コンテンツとなってしまうため、コンテンツの拡充とUI/UXの改善は同時に進めるとよいでしょう。

 

最近ではこのようなペルソナやカスタマージャーニーマップを分析した上で、ペルソナにとって「最も有益で関心性の高い」コンテンツを検討・制作するマーケティング手法は「コンテンツマーケティング」とも言われており、Google等の検索エンジンやSNSが主流となった今、最も重要な施策に位置づけられています。
※コンテンツマーケティングの詳細については、こちらの記事も参照ください。

 

Step3 : 認知させる

それでは、制作したコンテンツをターゲットに対して広く露出し認知させるためには、どのような手法があるのでしょうか?

上記のカスタマージャーニーマップの「調査・認知フェーズ」の施策にありますが、代表的なものとしては、以下の3つの方法があります。

  1. Google広告やターゲッティング広告などの有料型の「オンライン広告」を活用する
  2. ペルソナが興味・関心のある検索キーワードに対して検索結果の上位に表示されるよう「SEO」を強化する
  3. ペルソナが日々閲覧しているFacebookやTwitter、LinkedIn、Youtubeなどの「SNS」を活用して認知を広げる

ここで注意すべき点は、オンライン広告や検索結果ページ、SNS記事をクリックしてせっかく自社のウェブサイトのコンテンツに訪れてもらったとしても、そのコンテンツの質が低く「興味や関心を惹く」コンテンツでない場合、顧客の記憶に残りづらく、すぐにページから離脱する可能性が高いということです。

そのため、認知させるための各施策はあくまで手段であり、本質的にはペルソナにとって「最も有益で関心性の高い」コンテンツを検討する「コンテンツマーケティング」と常にセットで考える必要があります。

また、訪れてもらったコンテンツのページ内に「CTA(Call to Action)」と呼ばれる次のフェーズの行動を促せるためのバナーやテキストリンク導線などを設置して、関連するページや事例、問い合わせフォームに積極的に誘導するような取り組みも重要なポイントとなるでしょう。

 

各施策の方法や投下予算により獲得できる潜在顧客数の成果は変わりますが、一般的には「オンライン広告」は成果が早い反面、投下した金額に対してある程度の集客数が固定化され、同じ予算内では大幅な改善は見込みにくい。

一方で「SEO」や「SNS」は、コンテンツマーケティングとの相性がよく、成果がでるのが遅い反面、日々のコンテンツの量産との相乗効果で中長期的なスパンでは、集客数が右肩上がりに増えていく施策と言われています。日々作成したコンテンツが「資産化」され、その資産が最終的な収益を生むイメージです。

まとめ

いかがでしょうか?潜在顧客を増やすためのマーケティングDX施策への取り組みは、ペルソナやカスタマージャーニーマップを作成することから始まり、コンテンツマーケティングを主軸として、オンラインの集客施策を実施する取り組みが重要となります。

そのためには、これまでのアウトバウンド型の営業活動やオフライン広告との比率、業務形態・組織体制そのものを変えていく必要もあるでしょう。

ただし、一からこれを全て実践していくとなると、ペルソナとカスタマージャーニーマップの検討だけで3ヶ月〜半年、コンテンツ制作に3ヶ月〜半年など、多くの期間とコストが必要になるため、あるべき論のペルソナとカスタマージャーニーマップの大枠を1ヶ月などの短期間で作成し、コンテンツ制作もまずはLP1枚やブログ2〜3記事から始めるなど、スモールスタートでいち早く開始し、DX時代特有の「データ分析」を有効活用しながら、運用の中で日々改善していく手法で実践していくことをお勧めします。

次回の記事では、二つ目の重要なポイントである「各部門の引き上げ率をいかに改善するか?」のDX施策について解説いたします。

【第四回】引き上げ率を改善するための各部門のDX施策

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